死人の恋わずらい

 01 渋谷和行 池袋文芸坐

  邦画のビデオ販売用作品としては、AV機能に力を入れるところからはじまっている。コダックフィルムで発色を良くして、ライトの当て方もポートレイトを撮るかのように背景から浮き上がるようにしている(カメラはスーパー16による)。音響のミキシングが、コンサートのように派手なだけでメリハリがないので、却って印象に残らない。あと同時録音で音がこもっているのは、録音技術の無さ。劇伴音楽もひとつしかなく、どんな場面でも同じ曲が使われるので、怖いシーンも興ざめする。
 しかしながら、問題なのは、なぜPVやテレビ出身の新人監督は高校生ものを撮ろうとすると、みんな大林宣彦になっちゃうんだろうか。この作品では、田舎の水郷と古い建物があるコジャレタ町が、千葉県佐原市にロケされている(ここは『うなぎ』や『月光の囁き』でも使われている)。『うずまき』では、長野県上田市でロケされたりと、大林の尾道状態になっている。それでなぜか自転車二人乗りのシーンが必ずある。また主人公の家も和洋折衷の住宅だったりする。なんか地方都市出身のルサンチマンが感じられるんだよね。というか、 映画で一番大切なものはイメージなハズなんだけど、それをパクってきてなんとも思わない感覚が、PV、テレビ出身って思ってしまう。演出や編集の下手なところは置いとくが、勘違いしてんじゃないか。まあ、タレントをきれいに撮ることだけはほめられるけど、役者としては扱いきれてないね。後藤理沙はオブジェ同様だ。三輪明日美が芸達者なのには驚いた。そういえば『いきすだま 生霊』でも良かった。わかりやすくいえば、小林聡美クラスのうまさだ。
 SFXというか、CGI合成シーンがビデオ画面になるのには参った。合成の失敗だろうか、効果だと言われてもうまくいってないと思う。
(角田)