コレラの時代の愛

ryotsunoda2007-03-18

コレラの時代の愛

コレラの時代の愛

百年の孤独」のときのようなフォークロアやサーガを緩用するのではなく、ロマンとしての小説の面白さが全編を覆っている。すさまじい物語に幻惑されるけど、すべてが「愛」の一言でなんでもありの世界へと引きずり込まれる。
「愛」のモチーフは一見安直なデウス・エクス・マキナにも思えるが、舞台となる19世紀から20世紀初頭のコロンビアの古い港町を舞台に一組の男女に起きる事件を描写するのに、小説世界で展開される形式的な「愛」のスタイルを「性愛」まで拡げ、さらにその先まで推し進めるテクニックは、小説の元々持っていたチカラをもう一度ひっくり返して取り出しているわけで、古くさいと思う人にはそう思えるだろう。ただ読み物の愉しみが、テーマや構成にだけあるのではなく、どこまでも続く細部の描写にあることを改めて教えてくれる。