仏像大進撃

上野の森、東京国立博物館に夕方5時に入ると、いつの間にか人の流れが出来て会場へと続いている。「仏像 一木にこめられた祈り」、盛況な展示会です。平成館にははじめて入った。すっきりした建物ですねえ。チケットを渡し二階にエスカレーターで上がる。

人の熱気で湿度が上がっているんじゃないかと思うくらいちょっと息苦しい。“一木オールスター。百四十余�東京に集結!!”というコピーには偽り無く、仏像が居並ぶ様は圧巻。
暗い中かすかに当てられた照明が心地よい。ただ暗すぎて目の焦点が合いにくいので、細部を見たいのならオペラグラスでも持参するのが良いです。後ろにも回りこんで見ることができるのが面白い。
人だかりが途切れない『幻の湖』で御馴染みの滋賀・向源寺の国宝 十一面観音菩薩立像が素晴らしいです。体長2m近くの大きさで完璧なプロポーション。その造型に思わずため息が出ます。写真じゃなく足を運んで実物を見る意味があるとつくづく思いました。
巧緻な細工の仕事のあとに待ち構えていたのが、円空の仕事。十一面観音菩薩立像・善女龍王立像・善財童子立像。こちらの方にガツンとやられました。丸太を縦に三つに割り、本仏と脇仏2体を一夜で彫る。再びそれらを併せるとまた一本に木に戻る。まさに木の中に隠れている仏の姿を掘り出すというプリミティブな力を感じました。それにしても一灯のかすかなスポットライトだけで、これだけ対象を引き立たせ表現できるとは思ってみませんでした。展示も進化してますねえ。

一階に下りて「一木彫ができるまで」のコーナーで制作の工程を見ることができて興味深かった。改めてすごい技術ですわ。
そのまま本館へ渡り、ついでなので久しぶりに常設展を駆け足で徘徊する。結局ピンと来たのが、長澤芦雪の「蝦蟇仙人」だった。このあいだNHK「知るを楽しむ」で知って、その大胆な画力とユーモアにひかれてました。なんかいいねえ。ネットで探したけど写真が無かった。もっと見たい…。

さいきん、歴史、地理の文脈から切り離して、もう一度美術作品を並べ直そうという、ポストモダーンな企画展が多くなった気がする。いままで知られていなかった作家の再評価になってイイとは思うのだけど、遊び感覚が一歩間違うと単なるアカデミズムの内輪受け、見せ物、衛生博覧会に逆戻りしてしまう危うさもあるなあと感じます。それは映画も同じですかね!