王になろうとした男 ジョン・ヒューストン

王になろうとした男

王になろうとした男

この本を読む前の知識で、彼の経歴について書いてみると「名優ウォルター・ヒューストンの息子で、ボクサーなどの職を転々として、シナリオ・ライターになり『ヨーク軍曹』でアカデミー賞。『マルタの鷹』で監督デビュー。『黄金』『アフリカの女王』『赤い風車』『荒馬と女』など何作もの大作映画を撮る。晩年は俳優としても活躍する。娘はアンジェリカ・ヒューストン」というくらいだろう。これはだれでも同じじゃないかな。
しかし、この自伝のは、ルイス・ブニュエルの「わが自由の幻想」のも匹敵するくらい愉快痛快な面白さだ。スケールのでかい自由人であり、映画も監督している男の自伝と言ったほうが正しい。まじめな映画学徒は失望すると思うけど。
まず本人が私の映画にはスタイルなんてものは存在しないという。そんなものを追求するヒマがあったら、狩りをしていると、延々と狩りの話。アフリカ、インド、アイルランドで猟銃をぶっ放す。
シナリオは書ける才能がある人に書いてもらうと、次々と作家に仕事を依頼する。ヘミングウェイカポーティ、WRバーネット、エリック・アンブラー、ロマン・ギャリ、カーソン・マッカラーズフラナリー・オコナーレイ・ブラッドベリ、アーサーミラーなどなど。この他にも父母の交友関係からも様々な文化人と交流したり、海千山千の人物たちとも渡りあう。
戦時中は従軍してとして、「アリューシャン報告」「サン・ピエトロの戦い」を最前線で撮影。戦時後遺症を扱った「光あれ」は1982年まで一般公開されなかった。
そのフィルモグラフィーに挟まれた、5度にわたる結婚の顛末や愛人関係についてもやけっぱち気味に書かれている。赤狩りの時代についても、誰がどう動いたのか、明晰に書かれている。