自殺に向かう世界

自殺へ向かう世界

自殺へ向かう世界

申し訳ないが、一番面白かったのは、港千尋の「序 アクシデントの思想」という序文エッセーだ。
今回、内容には警句が少なく、おおっと思った部分も他の書からの引用だったりする。平易に書こうという意図があるためなのか、あるいは2001年の911の直後のためなのか。特にテクノサイエンスに主導される世界の歪みについて多く割かれている。そのあたりがピンとこないのはこちらの浅学のせいだろう。

《禁止に対する禁止》。このテクノサイエンスの〈進歩〉の基本法は、無法のグローバリズムの唯一の法になってしまったのであろうか。

産業情報社会のなかで製品や風俗が画一化する時代は終わりを告げ、世論が同期化する時代――情報革命の時代――が到来する。ここに至って、議会に於ける地政学は突如、《ライブ》――テレビがその鍵を握っている――の瞬間性による時政学にその道を譲らざるをえなくなる。やがて真のヴァーチャル民主主義、つまり幼児化したテレビ市民=遠隔市民の遊戯としての民主主義が飛躍的な展開を見せることだろう。(中略)そうした情報操作のシステムにおいては、光学的に正しいことが政治的に正しいこと(攻略)