サムライ  ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生

サムライ?ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生

サムライ?ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生


ここに書かれたいくつかの断片はすでに「世界の映画作18犯罪・暗黒映画の名手たち」(キネマ旬報)の「メルヴィル小伝と作品回顧」に取り上げられていた。本書に書かれていない河原畑寧氏のメルヴィルインタビューも読めるので併せて読むことをお薦めします。
メルヴィルについてもっとも大切なことは、フィルムノワールの旗手だとかヌーヴェル・バーグの精神的叔父ということではなく、自分の映画のために撮影スタジオを作ってしまった世界でも稀有な独立映画製作者だということだ。なぜそんなことができたのかは、本書では明らかにはなっていない。まあいくつかの推測はできるが、メルヴィルと名乗った理由を含めてもう少し傍証が揃ったら書きます。
読んでいてわかるのは非常に大人な発言をするねえというのが第一の感想。聞き手の若い映画評論家のシネマテーク史観を1930年代のアメリカ映画からリアルタイムで観ているキャリアで吹き飛ばす。「アメリカ映画について君と私の意見が対立したとしたら、正しいのは私だよ!」彼の映画と映画作りに対する率直な意見はいまもまったく古びていない。
もう少しフランス映画や現代史についてきちんとした解説があるとよりわかりやすくなったのに、昔ながらの短い原註と訳註の列記だけなので、もう少し工夫が欲しい。半端な対談などを載せる前に。