よしなごと

Date: 2004-11-13 (Sat)
NHK-BSで『海辺の家』なんていうのがやっていて、オープニングで屋外と室内を往復するヘンなキャメラの動きがあって、オッと思ったら撮影監督にヴィルモス・ジグムンドの名前を発見してつい観てしまう。
いい人っぽいケヴィン・クラインがいつキレるのかなあとか、ヘイデン・クリスヘンデンが不良少年なんで、やっぱりこいつダークサイド・キャラだなとか、メアリー・スティーンバ−ゲンって全然スタイル変わってないなあとか、いやストーリーはまあ感動モノなんでそれなりに楽しみましたが、演出はアーウィン・“ロッキー”・ウィンクラーですからね大雑把。
それよりもジグムンドの撮影が見事。このとき71歳だよ。よく考えると、海の崖っぷちに建つ家なのに朝日と夕日が同じ方角から昇り沈む不思議さは、太陽光線を操る繊細な匙加減で気づかない。全カット太陽の位置と光線を計算して設計しているからベタなありふれたつまらないカットがひとつも無い。コントラストの強い昼間から、夕日が沈んだ柔らかい光線まで自在に使っている。演出と絡まないところが痛いのだけど。わからないようにトレードマークのフォグ・フィルターも使っているようだったね。それだけじゃないだろうけど。
室内の細かすぎるライティングは素晴らしいです。たぶんに照明を最小限にして、細かい陰影が美しく表現しているので自然光なのかどうか迷うほど。と同時に色温度の違うランプの光線を画面に配置して、肉眼では感知できない美しさをあえて作り出す。テレビで観ていて電気信号のレベルが低すぎてノイズが走るほど、明るさを落として微妙な光線で画面を作っているんじゃないでしょうかね。DVDで確かめたい。
基本的にハリウッド映画は商品なので、昔からシャープなレンズで撮って、たっぷり照明を当てて、露出を絞ってピントが来るようにする。なのでテレビやDVDでも普通にキレイに観られるようになっていることが多いのだけど。いわばアンチハリウッド調だ。あとフジフィルムを使っているとあった。なぜその選択をしたのかも知りたい。
インタビュー読むと、彼は劇映画の照明で一番大切なのは「詩的リアリズム」だと言っている。
次回作はデ・パルマの『ブラックダリア』だ。『ミッドナイトクロス』よ再び!
『ジャージーガール』(監督:ケヴィン・スミス)も早く公開して欲しい。
海辺の家 [DVD]
海辺の家
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=237117
ヴィルモス・ジグムンド・インタビュー(英語)
http://www.theasc.com/magazine/oct04/vilmos/page1.html