赤城山(群馬県富士見村)

4時前に起きると、まだ外は暗い。なんだか陰鬱な天気だ。軽く朝メシを食い4時30分に家を出る。
クルマが利根川を渡り群馬県に入ると、雨がポツポツと降り出し、やがてワイパー全開で走るほどになる。さらに国道を外れ田畑が広がる県道を進むと、雨の朝6時頃だからなのか交通量はほとんど無くなる。
ぼつぼつ温泉の看板が目につきはじめると、道は直線ながらもゆるやかな登りに入る。両側には大きな松並木の枝が頭上を覆いながらどこまでも続き、あたりの風景が霧にけぶってなんとも幻想的。というか視界がきかないので、集中してライトを点けたままであまり飛ばせない。ここらは高原の別荘地なのだろうか、天然温泉付き分譲地があったりする。
赤城山の裾野は単独峰では富士山の次に広いという。だから登りは続くが、なかなか山道に入らない。ようやく赤城神社の手前を曲がると山道になる。狭い道を行くと、忠治温泉とか赤城温泉とかこんな山奥にも秘湯っぽい一軒宿の温泉が点在している。
いつの間にか雨は止んでいる。高度が上がると新緑の木々の間から、眼下に雲海のようなガスがゆっくりと山裾から上がってくるのが見える。雲の切れ間から薄日も差すようになる。おおっ、期待外の自然のスペクタクル(大げさ)に盛り上がる。
くねくねした道も1時間を過ぎると開けた山頂部に出る。この山はカルデラ式火山(地学おぼえているかな)なんで、まんなかが凹んで湖になって、まわりを山々が囲むという広ーい山頂なのだ。なので実は赤城山という名前の山は無い。窓全開で高原の朝の空気を吸いながら、県営の駐車場に到着する。まだほとんど人もいない。寒いというほどじゃない。
7時出発。道路沿いにある登山口から入る。ここも雨が降ったようで地面が濡れているが、ゆっくりとした登りで歩き易い。道も整備されて幅がある。これじゃ盛夏には短パンにサンダル履きで登る奴もいるのでは、と思ってしまう。そのうちに木製の階段や、鉄製の階段が混じるようになる。階段というのは、土が抉れなくて登山道保護にはいいけど、登る身としては傾斜が坂よりも角度が急でペースを強要されるようなので息が切れて困る。休憩回数と時間が増えて徐々にペースが落ちてくる。
鳥がうるさいほど鳴いている。新緑もまだ浅く赤城山の名物のツツジもまだ二分咲きくらいだ。でも蕾をつけた花がたくさんあったので、あと二週間もすれば満開になるだろう。今年は春が遅いのかな?
それでも30分で尾根に出る。林を抜けるとなぜか快晴。だけど山の下の方は真っ白でなにも見えない。この時期じゃ雲海にもならないだろうし、ガスが上がってきて巻かれたら悲惨だなと思い、ちょっとペースを上げる。
ほどなく駒ヶ岳(1685m)を通過して一旦下ると、大ダルミという山と山の間の窪地。ここから高低差300メートルを上がる。300メートルってさ距離にしたら近いけど、高さだとビルのワンフロアの高さがまあ5メートルとすると、60階分だよな。…でまた延々と木の階段が続くわけだあ。すぐに心拍数が上がり、2分に一度は休憩を入れる。霧はどんどん昇ってくるし、天気はまあ持ちそうだけどなんかなあ。なんでこれほど苦労せにゃならんのだ。
9時、山頂の御黒檜神社に辿り着く。古い鳥居があり、ガレ場に石がゴロゴロして賽の河原っぽい。下には大沼と正面に地蔵岳がよく見える。しばし休憩する。600円の携帯用ザブトンを買ったので岩の上に敷いて座ってみる。快適快適。おにぎりを頬張りながら、ガイドブックを開くと…。アレ、頂上はここじゃないのか。と気づく。
あわてて荷造りをして、10分尾根道をツツジを掻き分けて進むと、黒檜山(1828m)に出た。しかしここも雲の為に眺望が無く残念。チェッ仕方ないか。
下りのコースは濡れた大きな岩を踏みながら泥道を行く。階段がこっちにはない。うーむ周遊コースを誤ったようだ、逆回りコースだったな。底が磨り減ったトレッキング靴だと岩や木の根っこに何度も滑ってひやひやする。ゆっくりとものすごくゆっくりと降りて行く。この時間になると人がぞろぞろと登って来てすれちがう。下りの岩場は疲れるよ。特に雨上がりは。
それでも1時間近くかけてようやく舗装道路まで降りる。ここから車道をぶらぶら歩くと、赤城神社がある。大沼のなかにある島に建てられた神社だ。橋を渡るとなぜか鯉がたくさん泳いでいた。手を叩くと寄って来るから現金なものだ。湖の水に手を入れたが冷たさは感じない。ボート乗り場のそばには手持ち無沙汰な土産物屋が数軒並んでいて、昔ながらのちょっと寂れた感じも良い。観光シーズン前の静けさなのかな。そこに来る私も酔狂なのだろうが。
駐車場に戻ったのが11時過ぎ。ここから無料になった赤城自動車道を一気に前橋まで下り、国道17号線バイパス経由で帰ると2時間で着いてしまった。
今日は山はいまひとつだったが、ドライブが面白かったからイイや。次回は上州の散策と合わせてルートを計画しよう。

<参考>http://www.ne.jp/asahi/ohirune/yk/annai/sanzan/akagi.htm