明治侠客伝三代目襲名

加藤泰監督
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD21749/
本当のところヤクザ映画はキライです。あの世界というのにはどうもついていけない。鶴田浩二の優等生ぶりにぞっとするし、藤純子なぞまったく良いと思ったことがない。これ昔テレビで見たけども途中でやめたような気がする。今回も跡目を継いだ鶴田に丹波哲郎が「菊池君エライ!」と叫んだあたりでやめた。その前のアラカンの腹の傷口が開いて血が足を伝わり流れるのを鶴田が手ぬぐいで覆うあたりなど、わーっとチキン肌になる。藤純子の純朴な娼婦がしなをつくるあたりも同様。どうせこのあと藤山寛美津川雅彦が殺されて殴りこみに行くんだろうなと予測がつくしなあ。
東映任侠映画好きには傑作らしいんだけど、全然ダメです。いやものすごくきちんとできているんだろうけどね、いわば建前だけの忠臣蔵みたいなもので、あれだって忠君奉国というよりは、堅苦しい武士を揶揄した町人文化から見た世界という解釈があるわけなんだけど、この映画の場合のストレートな任侠義理人情礼賛は怖いねえ。これに陶酔できるような人が怖いです。加藤泰ってあの当時の映画人としてはレッドパージにあったりしたけど作品に政治やイデオロギーの影がまったく見えない。弟子筋の鈴木則文の過度のイデオロギー臭さとは相反する。どっちがどうということじゃないけど、だから加藤泰の映画の物語世界の人物は時代とともに古びることはないとも言える気がする。