ハリウッド・ビジネス

ハリウッド・ビジネス (文春新書)

ハリウッド・ビジネス (文春新書)

「映画とは芸術性の高い商品である」この一言を認めるかでハリウッドへの道が開かれる。
著者はハリウッドでエンターテインメント関係の弁護士を務めている。筆者が驚いたのは契約社会アメリカなのに、ハリウッドの契約概念は非常に甘い ことだ。口約束が多く、作業が終わった後に契約書を 作ることがザラだという。
具体的な例が多くて楽しめる。『オースティン・パワーズ』のマイク・マイヤーは映画を作りたくなくて言い訳を考えていた。契約書には、彼が全権を握りシナリオを決定出来るとあるのを見つけ、シナリオが気に 入らないと言ってシナリオを書いた自分自身にNGを出して映画制作を延ばした。
クリント・イーストウッドの愛人ソンドラ・ロックと別れるとき、彼女が映画監督になるのを助けたら告訴を取り下げると言われて映画会社ワーナーを紹介する。彼女は第一作は撮れたが次が何年経っても企画が却下され映 画化出来ない。映画会社では全く映画を撮らせる気はなく、ウラでイーストウッドが手を回して、ワーナー経由で彼女の事務所経費を立て替えたりしたというのが真相。慰謝料をケチったということだ。
資金を集めるが赤字なので出資者には戻らないカラクリはすごい。ハリウッドには数字の違う帳簿が4冊あるという事実を暴いた『星の王子ニューヨークに行く』裁判の経緯や、パーセンテージ収入のボーナスを巡るディズニーVSカッツ エンバーグ裁判。ビデオの権利収入に対するハリウッドの考え方を変遷など資料としても目新しい。
海千山千の強者というよりセコイ奴等が立ち回る世界の話だなあと思う。いまのハリウッドを読むサブテキストにお薦 め。