アメリカ映画の文化史(上下)

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

アメリカ映画をその最初から1960年代のニューシネマの頃までを社会科学の方向から切って行く。そこにあるキーワードは、 検閲、トラスト、中産階級だ。
移民相手の商売のニッケル・オデオンは、エジソンがフィルムや機材の独占によって作り出されたトラスト(独占企業体)と非トラストの争いの中で繁栄していく。それも結局非トラスト組みが勝ち、それがハリ ウッドの基になっていく。そこらの叩き上げが撮影所の主、タイクーンたちだ。 観客として映画産業を支えた中産階級(労働者・移民階級)に対しての 20世紀のアメリカ人のモラル を規定していくのに映画が利用される。というよりもいかがわしい映画というものに行くことができる免罪符として自主検閲が導入される。その制約のために60年代には世界の流れから取り残されてしまうのも事実だ。反対に言えば、 映画 の検閲を通った「アメリカ式生活様式」がアメリ中流社会のモラルを作り上げたことを指摘する。フランク・キャプラの在り方などが分かりやすいだろう。もうちょっとウォールストリートとの関係が書かれていればもっと複眼的になった のに。