テレビの黄金時代

テレビの黄金時代 (文春文庫)

テレビの黄金時代 (文春文庫)

昔出ていた、著者の編纂の「テレビの黄金時代」と同一の書名だが、中身は違う。小林の最近の 芸人ノンフィクションの手法で彼がテレビの現場にいた時代を書いている。これを読むとディープな小林 信彦マニアは(私だ!)、あのフィクションのあの人物は彼がモデルだったのねというのがさらにわかる。逆に読んだ事のあるネタも多いことも確かだ。 冒頭に書かれている「イグアナドンの卵」という芸術祭参加バラエティー番組(!)を有楽町読売ホールで見たことがある。印象は薄い大学生が文化祭でやる観念的な劇のように思えた。ちょっと持ち上げ 過ぎのような気もするのだがその当時を思えば画期的な番組だったのだろう。ただテレビと言う舞台に飛び込み、駈け抜けて行った人たちが活写されてあの人がテレビをどう使ったのか、いわゆるタレントの姿が現われて いる。青島、永、巨泉、前武、作者自身、もしイレブン PMの司会を引き受けていたらといまでも考えることがあるのだろう。その人間観察も見事だ。今回、日本テレビ内の派閥争いについてもはじめてキチンと書いている。なにがあったの か。しかし作者の粘着質はすごいと思う。政治風刺をしていながら、実は変節漢だった放送作家三木トリローの実像について、近くにいた神吉拓郎は死ぬまで口を開かなかったことを非難しているところなぞ、執念だなあと思う。他の芸人 シリーズよりも一歩引いた位置から書いているので、いつものセンチさとお友達理解者感覚が前面に出ていないので鼻につくこともない。テレビの通史としてもオモシロイ。