一言いうたろか 新伍の日本映画大改造

彼は昔からずっと日本映画について限界を知りながらまともなことをメディアで言い続ける監督だ。この本は北野武 が第二作を撮った頃、タレント監督がわんさと出て、バブルの名残があって、伊丹十三が顔を切られた時代に書かれた エッセー集だ。作者の日本映画に対する提言は、役者だけでなく製作・監督もやるためにその視点は多岐に及んでいる。
ハリウッドにできないで日本映画にできるものはなにか。どんどん、なにも知らない新人に撮らせてこそ新しい発想が 生まれると言い切るなど、真面目なものが多い。その合間の昔話も面白い。『実録共産党』はスタッフキャストも決まって いたが、代々木方面で前売り券が捌けそうもないので中止になっただけだとか、中島貞夫は『893愚連隊』でスポニチの賞を取ってから映画がおかしくなった、マキノ映画は長屋民主主義なので、殿様や歴史上の偉人の出てくる話は描か なかった。勝新勅使河原宏の映画に出たり、中村錦之助が難しい映画に出たら、二度と大衆の客足は戻らなくなってしまった。そこを切り抜けられたのは市川雷蔵だけだと。ためになります。