草映画10

ryotsunoda2004-12-29


しつこく続いているなあ。新しい製作は全然動いていないのだけども。えー、前回書いた『悪魔の屍』の撮影メモが出てきたので、そのまま貼ります。


彷徨猟奇譚墓場狂いの顛末(仮題)

<ストーリー>
探偵が消えた。ある連続殺人犯を追っていたが、その消息は杳として掴めない。同僚の探偵が最後に訪れた男の家に向かう。愛想の悪い胡散臭いその男は何も知らないという。一旦は引き上げた同僚の探偵が、忘れ物に気づき再び訪れると、今度は上機嫌で出てくる男。しかしその正体を見破った同僚の探偵は、カッターで襲われ殺されそうになるが、そこに先程の愛想の悪い男が現れる。二人は実は双子であり、上機嫌の男(弟)の方が犯人だったのだ。愛想の悪い男(兄)はその所業に苦しんでいたのだ。二人はもつれ、兄が刺され弟は窓から落ちていった。

<撮影シナリオ>
1.アパート・外
曇天の中、車から降りて歩いてくる同僚探偵

2.アパートの一室ドア・外
探偵(写真を取り出し)「この男がここに来たよね」
男(兄)「…」(写真を手にして無言で首を振る)
ドアが閉まりカギが掛かる
ドアの魚眼レンズ、眼のアップ

3.リビング・内
部屋に写真を持って入ってくる。やがて兄は手近な椅子に腰を掛けて俯く。
音がして、キッチンからもうひとりのそっくりな男(弟)が冷蔵庫の氷を齧りながら出てくる

4.押入れの中・内
探偵窒息 懐中電灯を点す

5.和室・内
押入れを開けると弟がいて、探偵はビニール袋を被せられて死ぬ。弟はデジカメで記念写真を撮る

6.アパート・外
同僚探偵は車の所で、写真が無いことに気づきあわてて引き返す
空に飛行機の低空飛行

7.アパートの一室ドア・外
探偵「どうも…さっきの写真を返して貰えないかな」
男(弟)「写真ですか何のことか…(ちょっと考えて) ああ、あれね。どうぞ上がってください」

8.書斎・内
真っ暗な部屋の明かりをつける。
弟「ちょっと仕舞ったんでね」
とクローゼットを開ける。
クローゼットの中に死体が吊るされているが探偵は気づかない。
弟は探偵を写真に撮る。
弟「ここじゃないみたいですねえ」
探偵「こっちは遊んでいるヒマはないんだ」
リビングで物音がして弟が部屋から出て行く。
探偵はその隙にデジカメを見て愕然とする。
探偵「これは何だ」
いつの間にか近づいた弟に探偵はカッターで切りつけられて殺されそうになる
そのとき兄が叫びながら出てくる
兄「やめろー、やめるんだぁあ」

9.ベランダ・外
二人がもつれて部屋から出て行き、兄が弟に刺され、弟は兄に突き飛ばされて転落する

10.リビング・窓込み
兄の死体と同僚探偵
やがて雨が降り出す
窓辺に寄ると海が見える

<MEMO>
ロウソク 陽炎
光源込み
光源Mix
パープルフィルター
マクロ、シャローフォーカス(カッターのエッジ)
傷メイク
モニター照り返し
極端なローアングル



…まあ好き勝手書いてますね。どっかで観たような90年代シリアルキラーものですが、2、3時間で書いたものですから。
撮影はほぼ順撮り。スタッフがいないので自分で撮影・照明をやりました。カメラが今回3CCDではなく、1CCDでした。撮影しているときは画質悪くないと思ったんですが、仕上げのときに24コマに変換したり手を加えるとやはりクオリティが下がります。
しかしビデオは露出がわからん。最終的には露出計で全部測光して決めるくらいカメラのクセを知らないと好きな画は作れない。その許容範囲の狭さがフィルムとの最大の違いだと思う。
シナリオに沿って撮影記録を書いてみますね。中年になるとみんな出来る役柄が広がるのが良い。「探偵」とか書いてもウソ臭くないもの(そうなのか?)。探偵は大滝秀治殿山泰司でやってよと頼んだら、本当に真似て演じやがった。

1.アパートの入口
 外のガラス扉を開き、探偵が入ってくるフルショット(写真参照)
  *「火曜サスペンス」なら屋内を明るくして、屋外を多少飛ばすんだけど、逆に屋外に露出を合わせて絞り、人物はシルエットにする。いい感じで強風に木が煽られているので不穏な雰囲気が出る。今回はクロード・シャブロルっぽい様式的なサイズと人の歩きと出入りを心がける。余談だけどシャブロルに2時間サスペンス撮ってもらいたいよねえ。イイのができると思うんだけど。

2.ドアの確認窓
 魚眼レンズに映った探偵と見る眼のアップ
  *覗き窓に直接カメラを密着させてマクロ接写で撮り、編集段階でブローアップすると意外とうまくいった。覗いている眼を撮るとき、屋内は真っ暗にしたので、外から懐中電灯の光を当てて照明が顔を照らすようにする。

3.リビング
 弟が床に座り、カメラがパンすると奥のキッチンから双子の兄が現れる
  *ようやくスモークマシンの登場。電熱で液体を気化して煙にするために暖まる時間が必要。かなり炊いたのだけどすぐに拡散してしまう。プロ用よりは持ちがよくない気がする。あと当たり前だが、照明を当てないとスモークは効果がわからない。今回カメラの解像度がいまひとつというのもあるが、もう一工夫だなあ。一人二役はカメラを止めたんだけど、そのままだと当たり前で面白くないので、壁塗りパンでふたたび弟を映すようにしたので、一瞬観ている方があれっと思うようにした。単純に私が弟の衣装を着ただけなんだけどね。原始的なトリックです。

4.和室
 探偵が部屋を探すと死体が見つかる。そのとき兄がワイヤーで探偵の首を絞める
  *ここはスモークを極端に炊いて恐怖映画っぽくする(笑)。

5.リビング
 探偵の死体。弟の死体。寄り添うようにナイフを腹に刺した兄が横たわる
  *時間が無くなったので、細かいアクションが撮れなくなった。ブルーバックを床に敷いて、合成画面を作る。いい加減にやったので編集のときに合成マットがうまく切り取れずに難儀する。特撮はきちんと撮影のときにやりましょう。

今回辻褄合わせの説明的なアップとか撮らなかった。セリフも敢えて撮らなかった、同録のノイズ扱いにした。20カットくらいでしょうか、あまり凝る時間は無かったけど3人じゃこれくらいですかね。