信濃越後之國秘境行

ryotsunoda2002-09-02

【9月2日(月)晴れ】

高原へいらっしゃい

 6時頃目覚める。空は明るいが、この谷間までは陽が差して来ない。散歩に出る。空気が冷たい。あとで確認したら気温14度。秋じゃないか。川沿いに少し行くと、東京電力の揚力発電施設がある。その脇を通り、河原に下りる。この先では、温泉が湧いているのでスコップで掘れば、自家製川湯温泉が出来る。いくつかその跡地がある。手を入れると熱い。源泉か?

 向こうから東京電力の人が来て、上流で放流したので、それほど水量は増えないけど、一応気をつけて下さいと言う。ここは濁流になったら怖いだろうな。ここは谷なので低い場所のような気がしたけど、よく考えれば、ここから30キロ川が下っているのだから、山の中腹しかもかなり高いところ いわゆる渓谷だよなと改めて思う。
 太陽が山の斜面にも当たりはじめた頃、アキアカネが乱舞しているのが見える。その数、数百。はじめはカゲロウとかと思ったけど、もっと大きい。とっぷりと秋の気配。朝食もさりげないけど美味い。地もとの米を土産に買いたいけど、昨日の道を戻るのかと思ったので…あきらめる。テレビでは昨日の県知事選の結果が流れている。 結果はヤスオちゃん圧勝。
 9時頃に出発。国道405号線は宿のあたりで終わりなので、ここからは林道。覚悟を決めて入るが、ん、道がいいじゃん。広くてさ。なぜか整備が行き届いている。嗚呼、 農林補助事業のパラドックス哉。とは言っても山を登ることには変わりがない。しかし、一面の山々には、送電線の鉄塔一本も無い。誰も入った事のないブナの森がどこまでも広がっている。ところどころに落石の痕がある。今日から岩魚釣が解禁らしく、何台かクルマが止まっているのを見かけた。
 順調に県道に出て、志賀高原へと向かう。なんだこっちから来れば、楽だったのに。教訓:田舎の山道は地図を信用しないこと。平地を通る迂回路に勝る近道は無い。


 スキーというものをできないしないので、志賀高原には無縁だけど、近づくに連れて、白樺林が多くなり、いかにも高原リゾートの様子になる。焼額山スキー場など、全部がスキー場な辺りを抜ける。ホテルにも人がいたりするが今時分はみな、何しにここに来ているのだろうか?もともとなにもないところにスキー場だけ乱立するのは不思議な光景。西武、堤一族の息がかかっているのか。
 国道292号線はいろんな地方のナンバーの車が走る。こちらは安全走行なのでどんどん追い抜かせて行く。渋峠のあたりは国内の国道でもっとも高いポイント、標高2000メートルくらいだ。見晴らしの良い辺りでクルマを停め、横手山の展望台に登る。二人乗りリフトで頂上に行くと、遠くに 白馬岳の残雪までくっきり見える。雲一つない晴天。風はさわやかな高原の気候。たまにはさわやかな観光コースも良しとしよう。

横手山付近から北西を望む 左奥が白馬岳)


■お釈迦様でも…


 ここを過ぎると群馬県に入る。万座、白根の硫黄の匂いで煙った辺りを通ると、観光客が多くなり道路も混む。そして草津温泉に出る。とりあえず、中心の湯畑に行く。近くの町営駐車場は2時間500円。思っていたより老若男女人出がある。定番温泉地としての親しみやすさは健在なのだな。横町路地の呑み屋街やストリップ小屋もあるしザ・温泉という感じ。
 何を食ったらいいのかわからないので、ぶらぶらするけど、とりあえず見つけた蕎麦屋に入り、ざるうどんを頼む。なかなかおいしかった。うるさい土産物屋が、まんじゅうを試食させると、すかさずババアがお茶を渡し、足留めさせようとするので、つっけんどんに茶を断り、まんじゅうだけもらう。甘すぎ。 なぜか片岡鶴太郎美術館がにぎわっている。いろいろやっているけどいまひとつ定番土産物がないよね。


白根山)(草津の湯畑)

せっかくだから、湯でも浴びてくかと、湯畑の横にある無料温泉に行く。入ると意外に小さく、すぐに脱衣場とその奥に木の湯船が二つ。白濁した湯熱いというか罰ゲームのようだ。なんとか無理をして肩までつかるがすぐに出る。 弱酸性の湯なので石鹸いらずで肌がすべすべというのは本当だ。
 湯当たり気味のまま、東京方面へと走らす。草津から降りてくると、要するに今日は朝からずっと山の中に居たんだということを再確認。ようやくおなじみの夏の暑さが戻ってきた。


 そのまま帰り道なので、榛名湖でも周って行く。そこまでの広い山道には、ドリフト族のタイヤの跡がいっぱい。なかには、道路から外れて消えているものもある。もう人出はなく、緑の榛名富士が絵葉書のようだ。わかさぎも今日から解禁だが、それほどボートは出ていない。湖に面した駐車場は私有地ばかりなので、町営の駐車場に停める。まあ釣りでもしなければ用のないところだなあ。ふと土産物屋を見ると、オリジナルビデオ 頭文字D、榛名湖編 企画榛名湖青年会議所 なんだ、さっきのはその影響なのね。知らなかったが原作マンガはここらの地元の話なのだ。一応巡礼コースなのね。
 下りの山道をドリフト走行をしながら(嘘)、伊香保温泉を横目で見て、渋川伊香保ICから関越道に乗る。夕方にもかかわらず、渋滞に巻き込まれずに東京に辿り付くことができた。 秘境はけっこう近い。


(さて榛名富士出てくる小津作品はなんでしょうか? 写真左:笠智衆 右:中村伸郎



<Mの夏休み日記>

 「夏を追いかけて」と題して、二人で長野の秘境へ1泊の旅をした。秘境なのにわずか1泊で行って帰って来れて、しかもあちこち立ち寄ったりも出来たのだから、 車と高速道路と運転のできる友は何ともありがたい。その旅行記を書こうと思ったのだけど、他人の旅行のハナシなど誰が読んでも退屈だろうから、ここにはもっと退屈なことを書く。
 思えば今回の旅はワタクシに様々なことを思い出させてくれた。そのベスト5だ。  きわめて個人的だけど知ったこっちゃない。では、いってみよう。じゃかじゃん。

 第5位。『そういえば、俺はカメラが苦手だった』
 今度の旅は、買ったばかりの我がデジタルカメラ、フジFinePixF-401のカメラテストを兼ねていたので、行く先々でバシャバシャ撮った。簡単だからどんどん撮った。全部で200枚近く撮った。で、撮ってすぐモニターで見てみるんだけど……う〜ん、写真ヘタだなあ、オレ。最初に立ち寄った小諸の近くの「海野宿」という江戸時代の宿場街なんて、誰がどう撮っても絵になりそうな佇まいの見事な景色なんだけど、どうもイマイチその雰囲気が出ない。構図を作り込むセンスも、即興でその場の空気を写すテクニックもない。それで思い出した。子供のころから、俺が撮る写真っていうと足が切れてたり画面が傾いてたり、上手に撮れたためしがなかったもんなあ。松本城のプラモデルに、友達が捕まえてきたアオダイショウの子供を這わせ、しかも 後ろから炎上させるという(何てことすんだ!)特撮写真を撮った時も、まるっきりピンボケでがっかりしたしなあ。あ、そうだ、俺、カメラにあんまり興味なかったんだ。しまった。

 第4位。『そういえば、夏、いちばん涼しいのは神社だった』
 海野宿のつきあたりにある大きな神社。夏の終わりだってのに汗がダラダラと、日差しがギラギラと、セミがミンミンジージーと暑苦しい日だったのに、この神社の境内に入った途端、ウソみたいに涼しくなった。何で神社って涼しいのかね。ひっそりしてるからかね。背が高い木がたくさんあって、木陰が濃いからかね。水の気配があるからかね。それとも、ちょっと神妙な空気が流れてるからかね。なぜかねえ。

 第3位。『そういえば、昔は目がよかった』
 直江津から延々と山道を走って、ついに目指す秘境、秋山郷は切明地区の宿に到着。この晩に露天風呂から見た星空の見事なこと! 最初は目が慣れるまで明るい星しか見えないんだけど、次第に慣れてくると、まあ、見えるわ見えるわ、まさに満点パパ、じゃなかった満天の星。「真ん中あたりにうっすらと見えるの、アレ天の川か?」と言われて見ると、確かにあるワ、そんな感じの帯が。こんなのCGの合成じゃなきゃ、今どき見ることはできないデ。流れ星、見えないかなッと、少女のように願い事を確認しつつ無言で空を見上げているのは、ハタから見たらホモのカップルにしか見えない、ボウズ頭の、しかもハダカの、しかもオヤジの二人なのでした。日常ではめっきり星なんか見なくなったけど、子供の頃は見てた気がする。その頃はもっと目がよかった気がする。あと、夜は常にまっくらだった昔の人って、もっともっと目がよかったんだろうなあ。

 第2位。『そういえば、リフトとかケーブルカーとかロープーウェイに乗るのって、最も休日らしいレジャーだった』
 秋山郷から山道を抜けて、途中クロスカントリーのトレーニングをしてるチームなどを眺めながら、やっと人心地がついたのは、志賀高原。人心地どころか、一大リゾート地ですなあ。で、せっかくだから車を降りてエスカレーターとリフトで横手山に登る。これが驚いたことに、(というか当たり前なんだけど)どっちを向いても高齢者ばっかり。子供連れとか、若いカップルとかは本当に少ない。昔はこのあたりも、若者たちや、若い家族連れであふれ返っていたのだろうなあ、と思わず遠い目になる。でも考えてみると、今は高齢者だけど、昔のレジャーブームの頃は、この人たちも若者だったはずで、例えば当時、 山本圭みたいな若者(とっくりのセーターとか着てね、青年団で本当は女の子を口説きたいのに我慢してるような理想主義のムッツリ野郎)だって、今だと結構なお年になってる筈だもんなあ。当時、 山本學だったらもっとだしなあ。当時、河原崎長一郎だったら……(もうイイっちゅうねん)。ということは、こうしてリフトとかに乗ってる人たちって、昔からずっと同じ人たちなのかなあ。昔は忙しい中の夏休みや日曜日とかに来てたのが、今は一年中休みみたいになってるっていうだけで。わからん。

 そして堂々第1位は……『そういえば、温泉というのはみんなの社交場だった』
 帰りに立ち寄った草津温泉は、お湯が熱いことと湯ノ花が有名だそうで。「湯ノ花畑」のすぐ前にある小さな公衆浴場(無料)には、若いバイク野郎から常連ぽいおじいさんまで、入れ替わり立ち替わりひとっ風呂浴びにくる。これがまた熱い。身体を洗うところなんかはなく、湯船に一度入ったら、とにかくじ〜ッとしてるしかない。 「こりゃ、うだっちまうね、どうも。湯ぅ動かすなよ、ほら、あちちちち、湯ぅ動かすなってんだろう、この野郎!」って、本当落語みたいな世界になる。でもそのかわり、このお湯に入る全員が「あちちちち」だから、その熱さが共有できて、友達みたいになれる。「いやぁ熱いね」「熱いですね」と自然に口もきく。お互いハダカだしね。普段はどう考えても接点がなさそうなおじさんやお兄ちゃんだって、この中では「熱い者同士」ってことで、奇妙な連帯感があるんだな。こういう空間て、そういえば近頃ないような気がする。あんまり熱いもんだから、湯から出たあとも、しばらくのぼせて動けない。みんな外のベンチやなんかで、ただ呆然としている。その、ホケ〜ッとした感じも、また温泉のいいところですな。  夏をおいかけての旅、最後は温泉まんじゅうも食べて、めいっぱい夏休みっぽさを満喫したぜい。心残りは、草津ロック座のステージを拝めなかったことだけで……ま、いいんだけどね、それは。

 というわけで、5位から1位までのご紹介でしたァ。カウントダウンTV!

【9月2日(月)晴れ】

高原へいらっしゃい

 6時頃目覚める。空は明るいが、この谷間までは陽が差して来ない。散歩に出る。空気が冷たい。あとで確認したら気温14度。秋じゃないか。川沿いに少し行くと、東京電力の揚力発電施設がある。その脇を通り、河原に下りる。この先では、温泉が湧いているのでスコップで掘れば、自家製川湯温泉が出来る。いくつかその跡地がある。手を入れると熱い。源泉か?

 向こうから東京電力の人が来て、上流で放流したので、それほど水量は増えないけど、一応気をつけて下さいと言う。ここは濁流になったら怖いだろうな。ここは谷なので低い場所のような気がしたけど、よく考えれば、ここから30キロ川が下っているのだから、山の中腹しかもかなり高いところ いわゆる渓谷だよなと改めて思う。
 太陽が山の斜面にも当たりはじめた頃、アキアカネが乱舞しているのが見える。その数、数百。はじめはカゲロウとかと思ったけど、もっと大きい。とっぷりと秋の気配。朝食もさりげないけど美味い。地もとの米を土産に買いたいけど、昨日の道を戻るのかと思ったので…あきらめる。テレビでは昨日の県知事選の結果が流れている。 結果はヤスオちゃん圧勝。
 9時頃に出発。国道405号線は宿のあたりで終わりなので、ここからは林道。覚悟を決めて入るが、ん、道がいいじゃん。広くてさ。なぜか整備が行き届いている。嗚呼、 農林補助事業のパラドックス哉。とは言っても山を登ることには変わりがない。しかし、一面の山々には、送電線の鉄塔一本も無い。誰も入った事のないブナの森がどこまでも広がっている。ところどころに落石の痕がある。今日から岩魚釣が解禁らしく、何台かクルマが止まっているのを見かけた。
 順調に県道に出て、志賀高原へと向かう。なんだこっちから来れば、楽だったのに。教訓:田舎の山道は地図を信用しないこと。平地を通る迂回路に勝る近道は無い。


 スキーというものをできないしないので、志賀高原には無縁だけど、近づくに連れて、白樺林が多くなり、いかにも高原リゾートの様子になる。焼額山スキー場など、全部がスキー場な辺りを抜ける。ホテルにも人がいたりするが今時分はみな、何しにここに来ているのだろうか?もともとなにもないところにスキー場だけ乱立するのは不思議な光景。西武、堤一族の息がかかっているのか。
 国道292号線はいろんな地方のナンバーの車が走る。こちらは安全走行なのでどんどん追い抜かせて行く。渋峠のあたりは国内の国道でもっとも高いポイント、標高2000メートルくらいだ。見晴らしの良い辺りでクルマを停め、横手山の展望台に登る。二人乗りリフトで頂上に行くと、遠くに 白馬岳の残雪までくっきり見える。雲一つない晴天。風はさわやかな高原の気候。たまにはさわやかな観光コースも良しとしよう。

横手山付近から北西を望む 左奥が白馬岳)


■お釈迦様でも…


 ここを過ぎると群馬県に入る。万座、白根の硫黄の匂いで煙った辺りを通ると、観光客が多くなり道路も混む。そして草津温泉に出る。とりあえず、中心の湯畑に行く。近くの町営駐車場は2時間500円。思っていたより老若男女人出がある。定番温泉地としての親しみやすさは健在なのだな。横町路地の呑み屋街やストリップ小屋もあるしザ・温泉という感じ。
 何を食ったらいいのかわからないので、ぶらぶらするけど、とりあえず見つけた蕎麦屋に入り、ざるうどんを頼む。なかなかおいしかった。うるさい土産物屋が、まんじゅうを試食させると、すかさずババアがお茶を渡し、足留めさせようとするので、つっけんどんに茶を断り、まんじゅうだけもらう。甘すぎ。 なぜか片岡鶴太郎美術館がにぎわっている。いろいろやっているけどいまひとつ定番土産物がないよね。


白根山)(草津の湯畑)

せっかくだから、湯でも浴びてくかと、湯畑の横にある無料温泉に行く。入ると意外に小さく、すぐに脱衣場とその奥に木の湯船が二つ。白濁した湯熱いというか罰ゲームのようだ。なんとか無理をして肩までつかるがすぐに出る。 弱酸性の湯なので石鹸いらずで肌がすべすべというのは本当だ。
 湯当たり気味のまま、東京方面へと走らす。草津から降りてくると、要するに今日は朝からずっと山の中に居たんだということを再確認。ようやくおなじみの夏の暑さが戻ってきた。


 そのまま帰り道なので、榛名湖でも周って行く。そこまでの広い山道には、ドリフト族のタイヤの跡がいっぱい。なかには、道路から外れて消えているものもある。もう人出はなく、緑の榛名富士が絵葉書のようだ。わかさぎも今日から解禁だが、それほどボートは出ていない。湖に面した駐車場は私有地ばかりなので、町営の駐車場に停める。まあ釣りでもしなければ用のないところだなあ。ふと土産物屋を見ると、オリジナルビデオ 頭文字D、榛名湖編 企画榛名湖青年会議所 なんだ、さっきのはその影響なのね。知らなかったが原作マンガはここらの地元の話なのだ。一応巡礼コースなのね。
 下りの山道をドリフト走行をしながら(嘘)、伊香保温泉を横目で見て、渋川伊香保ICから関越道に乗る。夕方にもかかわらず、渋滞に巻き込まれずに東京に辿り付くことができた。 秘境はけっこう近い。


(さて榛名富士出てくる小津作品はなんでしょうか? 写真左:笠智衆 右:中村伸郎



<Mの夏休み日記>

 「夏を追いかけて」と題して、二人で長野の秘境へ1泊の旅をした。秘境なのにわずか1泊で行って帰って来れて、しかもあちこち立ち寄ったりも出来たのだから、 車と高速道路と運転のできる友は何ともありがたい。その旅行記を書こうと思ったのだけど、他人の旅行のハナシなど誰が読んでも退屈だろうから、ここにはもっと退屈なことを書く。
 思えば今回の旅はワタクシに様々なことを思い出させてくれた。そのベスト5だ。  きわめて個人的だけど知ったこっちゃない。では、いってみよう。じゃかじゃん。

 第5位。『そういえば、俺はカメラが苦手だった』
 今度の旅は、買ったばかりの我がデジタルカメラ、フジFinePixF-401のカメラテストを兼ねていたので、行く先々でバシャバシャ撮った。簡単だからどんどん撮った。全部で200枚近く撮った。で、撮ってすぐモニターで見てみるんだけど……う〜ん、写真ヘタだなあ、オレ。最初に立ち寄った小諸の近くの「海野宿」という江戸時代の宿場街なんて、誰がどう撮っても絵になりそうな佇まいの見事な景色なんだけど、どうもイマイチその雰囲気が出ない。構図を作り込むセンスも、即興でその場の空気を写すテクニックもない。それで思い出した。子供のころから、俺が撮る写真っていうと足が切れてたり画面が傾いてたり、上手に撮れたためしがなかったもんなあ。松本城のプラモデルに、友達が捕まえてきたアオダイショウの子供を這わせ、しかも 後ろから炎上させるという(何てことすんだ!)特撮写真を撮った時も、まるっきりピンボケでがっかりしたしなあ。あ、そうだ、俺、カメラにあんまり興味なかったんだ。しまった。

 第4位。『そういえば、夏、いちばん涼しいのは神社だった』
 海野宿のつきあたりにある大きな神社。夏の終わりだってのに汗がダラダラと、日差しがギラギラと、セミがミンミンジージーと暑苦しい日だったのに、この神社の境内に入った途端、ウソみたいに涼しくなった。何で神社って涼しいのかね。ひっそりしてるからかね。背が高い木がたくさんあって、木陰が濃いからかね。水の気配があるからかね。それとも、ちょっと神妙な空気が流れてるからかね。なぜかねえ。

 第3位。『そういえば、昔は目がよかった』
 直江津から延々と山道を走って、ついに目指す秘境、秋山郷は切明地区の宿に到着。この晩に露天風呂から見た星空の見事なこと! 最初は目が慣れるまで明るい星しか見えないんだけど、次第に慣れてくると、まあ、見えるわ見えるわ、まさに満点パパ、じゃなかった満天の星。「真ん中あたりにうっすらと見えるの、アレ天の川か?」と言われて見ると、確かにあるワ、そんな感じの帯が。こんなのCGの合成じゃなきゃ、今どき見ることはできないデ。流れ星、見えないかなッと、少女のように願い事を確認しつつ無言で空を見上げているのは、ハタから見たらホモのカップルにしか見えない、ボウズ頭の、しかもハダカの、しかもオヤジの二人なのでした。日常ではめっきり星なんか見なくなったけど、子供の頃は見てた気がする。その頃はもっと目がよかった気がする。あと、夜は常にまっくらだった昔の人って、もっともっと目がよかったんだろうなあ。

 第2位。『そういえば、リフトとかケーブルカーとかロープーウェイに乗るのって、最も休日らしいレジャーだった』
 秋山郷から山道を抜けて、途中クロスカントリーのトレーニングをしてるチームなどを眺めながら、やっと人心地がついたのは、志賀高原。人心地どころか、一大リゾート地ですなあ。で、せっかくだから車を降りてエスカレーターとリフトで横手山に登る。これが驚いたことに、(というか当たり前なんだけど)どっちを向いても高齢者ばっかり。子供連れとか、若いカップルとかは本当に少ない。昔はこのあたりも、若者たちや、若い家族連れであふれ返っていたのだろうなあ、と思わず遠い目になる。でも考えてみると、今は高齢者だけど、昔のレジャーブームの頃は、この人たちも若者だったはずで、例えば当時、 山本圭みたいな若者(とっくりのセーターとか着てね、青年団で本当は女の子を口説きたいのに我慢してるような理想主義のムッツリ野郎)だって、今だと結構なお年になってる筈だもんなあ。当時、 山本學だったらもっとだしなあ。当時、河原崎長一郎だったら……(もうイイっちゅうねん)。ということは、こうしてリフトとかに乗ってる人たちって、昔からずっと同じ人たちなのかなあ。昔は忙しい中の夏休みや日曜日とかに来てたのが、今は一年中休みみたいになってるっていうだけで。わからん。

 そして堂々第1位は……『そういえば、温泉というのはみんなの社交場だった』
 帰りに立ち寄った草津温泉は、お湯が熱いことと湯ノ花が有名だそうで。「湯ノ花畑」のすぐ前にある小さな公衆浴場(無料)には、若いバイク野郎から常連ぽいおじいさんまで、入れ替わり立ち替わりひとっ風呂浴びにくる。これがまた熱い。身体を洗うところなんかはなく、湯船に一度入ったら、とにかくじ〜ッとしてるしかない。 「こりゃ、うだっちまうね、どうも。湯ぅ動かすなよ、ほら、あちちちち、湯ぅ動かすなってんだろう、この野郎!」って、本当落語みたいな世界になる。でもそのかわり、このお湯に入る全員が「あちちちち」だから、その熱さが共有できて、友達みたいになれる。「いやぁ熱いね」「熱いですね」と自然に口もきく。お互いハダカだしね。普段はどう考えても接点がなさそうなおじさんやお兄ちゃんだって、この中では「熱い者同士」ってことで、奇妙な連帯感があるんだな。こういう空間て、そういえば近頃ないような気がする。あんまり熱いもんだから、湯から出たあとも、しばらくのぼせて動けない。みんな外のベンチやなんかで、ただ呆然としている。その、ホケ〜ッとした感じも、また温泉のいいところですな。  夏をおいかけての旅、最後は温泉まんじゅうも食べて、めいっぱい夏休みっぽさを満喫したぜい。心残りは、草津ロック座のステージを拝めなかったことだけで……ま、いいんだけどね、それは。

 というわけで、5位から1位までのご紹介でしたァ。カウントダウンTV!