JOKER 疫病神

JOKER 疫病神 [DVD]
 98 小松隆志(ビデオ)

 池袋を舞台に昔、東西に分かれて抗争があった。そこで相手のヒットマンを返り討ちにした男を萩原健一が演じている。時間は現在に戻り、渡部篤郎の演じる、通称、疫病神は、子供時代に母親から虐待され、高校の時に逆に母親を絞殺した過去を持つ。その時受けたストレスのせいか、数百メートル全力で走ると血管が切れて死んでしまう持病を抱えている。時折たわむれに走り「だるまさんがころんだ」と心の中で数えながら、「まだ死なないじゃないか」と呟く。そんな彼の商売はジャブの仲介人。
 ショーケンは出所するも、組には帰らず、姿をくらましてしまう。そして彼を庇って殺された女への復讐を狙う。ここら辺、あまり喋らないが、存在感がある。やがて、見つけられ組の歓待を受けるが、裏では再び組み同士の抗争と裏切りの準備が進んでいた。渡部はショーケンのボディーガードとして行動をともにする。閉館した文芸座や池袋の様子が巧みに描かれる。ショーケンに惹かれていく渡部。
 ついに、抗争の火蓋が切られ、ショーケンは邪魔者として殺されようとする。ラストの文芸座での銃撃戦が泣かせる。『レザボア・ドッグ』の影響か、全員が黒いコートや服を着ているところがスタイリッシュだったり、渡部が同棲している看護婦(片岡礼子が良い)の住むアパートが山手線のすぐ脇にあったりして、ロケ場所や小道具へのこだわりが随所に見られる。
 これは、たぶん、脚本の高田純の功績も大きいだろう。渡部とチンピラの後輩との関係や片岡礼子との、さりげないシーンがいいし、話の展開もスムーズだ。監督の小松隆志も上手くなったものだ。『はいすくーる仁義』の頃はどうなるかと思っていたが。渋い作品ですが手抜きはありません。
 (角田)