サイレントヒル


ゲームは面白そうですね。ずーっとそう考えながら観てました。
とにかく美術やVFXはビックリしました。細部まで気を遣っていて『ヴィドック』なんかを思い出しました。このセンスはフランス繋がりですかね。この監督の『ジェボーダンの獣』は観てないのですがやはり凝っているのかな。
一番すごいなあと思ったのは、どこまでも霧で蔽われる屋外のシーンなのですが、あれはどうやって作り上げたのだろう。普通にやっても、人が遠くに行くと自然に消えてしまうほどスモークを見事に背景全体に均一に張ることは不可能なはず。CGを使っているのかな、ぜひ知りたいです。
クリーチャーはダーク・ナースのみなさんが良かった。まあゲームの化け物をそのまま実写化するのはどうなのかなあ。マジメにやっていたけどちょっと笑っちゃうカンジ。小中学生には受けるかもしれないが。あ、PG-12か。
シナリオがタランティーノの元盟友、ロジャー・エイブリーなのですね。ゲームの世界観云々というよりもゲームそのものなので、登場人物が人形の如くコントローラーの命じるままに動き回る。そのためにこちらが脳内ストーリー補完をしないとならない。場所を移動する理由付けがわからず「ああここでは手がかりをさがすために抽斗を開けているんだ」とか「手がかりがないからクルマのところに戻って、アイテムの絵を見つけると次のシーンに行けるんだ」とか、謎解きゲームの流れに沿ってストーリーが進んでいくんだなと思ってないと、何をやっているのかわからずに置いてきぼりになるシーンが多すぎる。エレベータへ向かうシーンなんかまったく不条理だ。なぜ地図を暗記する必要があるのか?ゲームの中の論理だよ。そもそも何のために地下に行くのかよくわからん。と、コントローラーをこっちに渡せと焦れったくなる展開も多いです。
ゲームならこちらに主導権があるので操作しながら入り込んでドキドキできるんだけど、映画の場合は視点が違うからね。感情移入するにはもっと仕掛けが必要です。映画がそこを放棄して映画化しましたよくできているでしょといっちゃアカンだろう。
まあ気にせずに甘く見ればいいんだけども、『ドーン・オブ・ザ・デッド』と同質のゆるさですね、怖くないもん。映像がよく出来ているから騙されてしまうだけで。
最近の傾向の映像が良くできているのもどうかと思うのですよ。「リアルにすることがテクニックとして可能だから焼死体写真そっくりに作って撮影してみました」というのは創作として認めたくない。
それはリアルとリアリズムの履きちがいだから。そういう部分のセンスの無さがダメですね。ラストに向けてどんどんイヤな気分になる。それは単なる不快感だけどね。
そこをなんとかするのが映画なのだけどさ、抑制表現のサジ加減を放棄しているのか、または「ここまでできちゃったよ」的なグロテスク表現に酔っているだもん。という部分がCM的な映像重視派監督の好きになれないところですね。
あと闇の世界になるところがフェードアウトじゃなく、もっと闇になる怖さを照明で表現しなきゃ。これもゲームならではの強制イベントの怖さだよな。登場人物が感じるように撮らなきゃ観客も怖がれない。『ピッチブラック』のほうが感覚としてよく演出できていた。
ゲームをやってみましょうかね。『バイオハザード2』で知識もゲーム脳も止まっているからな。