オール・ザ・キングスメン

オール・ザ・キングスメン [DVD]

ロバート・ロッセン監督(1949)。ビデオにて。観逃していたのとドン・シーゲルB班監督ということもあったが、それ以上に素晴らしいエンターテインメントで興奮する。
州知事に成り上がった男と取り巻く人間模様を地方政治の泥臭さを軸に人間のエゴと権力の魅力、それに憑りつかれると誰もが潔白ではなく灰色に染まっていく様子を安易に裁くこともなく、大人の色恋沙汰も過不足なく入れこんで描ききっている。
シナリオがものすごくよくできている。普通こんなに冷酷に登場人物を書けないよなあ。個々人の倫理の基準になる男女、家族などの愛情、名誉、プライドが政治権力の前に非情に押しつぶされて行く様は戦慄ものだ。しかも押し潰される者たちも一皮剥けば権力に魅了されているので救いが無かったりする。いわゆる映画的な偽善的な造型の人物がひとりも登場しないのだ。
ワンカットに複数人が入って演技するドラマの緊張感。簡潔で力強い演出は溜息モノだねえ。逆にいまこれだけのものが作れるかの方が疑問。