ラスベガスをやっつけろ

ラスベガスをやっつけろ [DVD] 
  Fear and Loathing in Las Vegas 98 テリー・ギリアム  (ビデオ)

 ビデオを観終わって、劇場に行かなかったことを非常に後悔している。それほど素晴らしい撮影。彫刻のようにデコラティブな分厚い作品だった。原作の挿画をそのまんま、韜晦なしに映像化するというアホな発想。それを映像化した、片目のイタリア人カメラマン(ヴィットリオ・ストラーロのスティディーカム・オペレータをしていてこれがデビュー作)は ビザールな世界を色彩と構図とカメラワークの洪水で見事に構成した。
 面白いのは、これが書かれた時代にはギリアムはアメリカにはいなくて、イギリスでモンティ・パイソンやってたんだから、いわば“アメリカ人だけど知らない現代アメリカ”を描いたところだね。インタビューでも言っているけど、「現代のダンテの地獄編だ」と
いうのはホントだ。非常に様式化された中世劇のように、現代アメリカの喧噪(ラスベガス!)を切り取っている。『フィッシャー・キング』以来、アメリカを描こうとして七転八倒していた彼が、ようやく辿り着いた“ギリアム第一章の最終幕”だと言える。
 (角田)