月光の囁き

 99 塩田明彦 (テアトル新宿)

 原作は読んでいないのだが、本屋でちらりと立ち読みをした段階では、内容のダイジェストという感じがした。基本通りに切り返しでお話しをつないでいく語り口に、新しさはない。
 フェティシズムエスカレートされていく過程が、誰の共感も得ることが出来ないキャラクター設定として描かれているので、その点が内容としてマイナスではないだろうか。 コミックの映画化の場合、コミックの中ではキャラクターはデフォレメされるためにキャラクターの設定は否応なく受け入れられるようになっていくのだが、それを映画化した場合には、エピソードを積み重ねない限り、キャラクターは観客の受け入れるものにはなりにくい。 その辺の力ワザが足りないために平面的なお話しをなぞったものとして仕上がっている。男女の関係性が替わるという分かりやすいシーンも上手く行ってない印象を受ける。シナリオを作るときに感情のラインを基調にしていないからかしらん。切なさが全面に出ず、最後まで変態性が表面に出ている印象を受けた。やっぱり終わりまでふたりの気持ちがよくわからんよ。題材は面白いのかも知れないけどね。
(角田)