誰もが知りたがっているくせにちょっと聞きにくいベストテンのすべて
ネットをクラゲのように浮遊している貴方なら、イギリスで映画オールタイム・ベストテンの第一位に『市民ケーン』が選ばれ、クロサワ、ミゾグチ、オズも入ったなどという芸能記事をお読みだろう。私も読んだし、公表されているサイトも覗いてみた。
が、呆れたね。とくに映画監督による、映画トップテンの人選。
・ここがそのページ
・投票監督リスト さらにクリックすると詳細な内容がある。
イギリスの映画雑誌「サイト・アンド・サウンド」はキネマ旬報みたいなもので、イエナ書店とかでちらりと見るたびにその保守さに、違うなあと思っていたけど、こんな詐術まがいの結果はいただけない。投票する映画監督の選択基準のひどさ。キネマ旬報ベストテン審査員並のめちゃくちゃさ。これが世界中に配信されるのは問題だ。英語がインターネットや映画の世界で主流だから正しいみたいな考えはよくないと思う。
ホントかって?たとえば日本代表の二人は、篠田正浩、長崎俊一、……。どこが日本代表やねん。まあイギリス出身の監督が多いのは愛嬌としても、オーストラリア、インド、カナダの監督が多いのは、英国連邦チックだよなあ。おまけにインドの監督はサタジット・レイを必ず選ぶようなやつらばっかりで、悪い冗談かと思ったよ。レイの上流階級から見たインドは、『ムトゥ、踊るマハラジャ』などの世界一の映画人口を支える世界一の本数を誇るインド映画とは、関係無いことは周知の事実だからだ。平たく言えば普通のインド人は『大地のうた』など観ないということ。
アメリカ人は現在のハリウッド勢力をほとんど反映していない。かろうじて合格点は、ヴァーホーベン、マイケル・マン、ジョエル・シューマッカー、サム・メンデス、ゴア・ヴァービンスキーくらいのもので(この人選も冴えているとは言いがたいが)、まあ一応アカデミー賞人脈ではあるわけだけどね。
問題は他の監督だ。ジョージ・アーミテイジ監督(『マイアミ・ブルース』、『あぶない看護婦』)、ハロルド・ベッカー(『マーキュリー・ライジング』『シー・オブ・ラブ』、『タップス』)、アンドリュー・バーグマン(『ドン・サバティーニ』、『素顔のままで』、『恋のジーンズ大作戦/巨人の女に手を出すな』)アーネスト・ディッカーソン(『サバイビング・ゲーム』『BONES ボーンズ』)。中古ビデオ屋のワゴンセールかと思ったぜ。かれらも同等の投票権があるのだ!!
アジア系は映画祭で賞を獲るような監督がかろうじて参加している。どちらにせよ真面目すぎる。
「サイト・アンド・サウンド」って昔からアンチ「カイエ・デュ・シネマ」路線があって、ハリウッドメジャーに色目を使ってヨイショしているので批評誌と言ってもぐずぐず。これもキネ旬と同じ。
結局のところ、まあ面白みに欠ける英語圏だけのイベントに過ぎない。集計結果は意味が無いし、権威でもなんでもないと思う。
その中で、おもしろかったのは、いわゆる映像作家に混じって、意外とビリー・ワイルダーが善戦していること。世界中どこでも教育テレビで毎年放映していたのだろうか。あとセルジオ・レオーネの『ウエスタン』の人気の高さ。ひと昔前なら考えられなかったんじゃないだろうか。
しかし何度も書くけど、こんなのが世界中を駆け巡り、『市民ケーン』、『ゴッド・ファーザー』、などが名画だねという一般常識として通用することがたまらない、全部訳出して笑ってやるぞと思っていたが、あまりの虚しさに途中で放り出してしまった。だって毎年変わらない春のフィルムセンターの映画史上の傑作のプログラムのような作品群を書き出すだけでうんざりだし、つまらない普通のコメントも読むだけ無駄。
大体さ、だれでも普通好きでもない映画は観ないじゃん、そこでいわゆる傑作と言われる映画だけを観ていれば、自分で観ようと思わない限り必然傑作と問われればそれしか浮かばないわな。『市民ケーン』を挙げる輩が、同じオーソン・ウエルズの国際自主映画『アーカディン氏』を観ているはずがない。観たとしても、「『市民ケーン』の輝きは無いな」とうそぶいていればことは済むのだ、そいつにとっては。これがベストテンのからくりな訳だ。
でもね丹念に見ていくと、かつての『映画芸術』のベストテン・ワーストテンにおけるハスミ、山田、山根のリュミエール三銃士の異端ぶりのようなセレクトをしている、オオッと思えるマニアックな連中が何人かいた。で、毒づいていても芸がないので、彼らだけ紹介することにする。
あれだよね、ベストテンなんていう遊びはさ、いかに映画について語るのがオモシロイかというキッカケのようなもので、毎回コロコロと変えたり、バランスを取りながら選んだり、他人とは違う映画を見つけ出すことで、その人の好みがわかったりして、お互いにこれも観たいねと語り合うと言った、きわめて個人的な愉しみなはずだよね。映画好きなら日替わりベストテンを作れるよ。
一方、つまらないトップテンを選ぶ奴は、
1.ともかく『市民ケーン』を入れる
2.ベストテンのバランスが悪くセンスが無い
3.こんな名作映画を選ぶオレって偉いと思っている
4.作っている映画がつまらない
という法則が見つかった。絶対一緒に酒を呑みたくない相手だよな。つまらん自慢話を滔々と聞かされて勘定ワリカンにされるのがオチだ。
ホントウに信用できるのは、「『市民ケーン』はいい映画だよね。でも、オレは『カサブランカ』も好きだな。メロドラマだけどさ」と言って酒を注いでくれる人でしょうね。
ということで、一緒に呑んで映画の話をしてみたい人たちを挙げてみました。フィルモグラフィーやバイオグラフィー。監督のコメントがあるものは翻訳し、ちょっとした感想も加えました。これから観てみたい作品もたくさんあります。
尚、訳文のクレームは受け付けません。文句があれば、原文参照のこと。
DIRECTOR'S POLL(投票結果)
■ジョン・ブアマン
1933年生
七人の侍(黒沢明)1954
第七の封印(イングマル・ベルイマン)1956
8 1/2 (フェデリコ・フェリーニ)1963
欲望のあいまいな対象(ルイス・ブニュエル)1977
博士の異常な愛情(スタンリー・キューブリック)1964
市民ケーン (オーソン・ウェルズ)1941
サンセット大通り(ビリー・ワイルダー)1950
惑星ソラリス(アンドレイ・タルコフスキー)1972
鉄路の白薔薇(アベル・ガンス)1922
国民の創生(DWグリフィス)1915
『ポイント・ブランク』、『脱出』、『未来惑星ザルドス』という骨が太そうな自分の作品と妙にマッチした10本。『惑星ソラリス』と『鉄路の白薔薇』がポイントDではないでしょうか。
■アレックス・コックス
1954年生
・本人のサイト
市民ケーン (ウェルズ)1941
肉体の悪魔(ケン・ラッセル)1971
皆殺しの天使(ブニュエル)1962
キングコング(メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック)1933
黒い砂漠(フランチェスコ・ロージー)1972
オー!ラッキーマン(リンゼイ・アンダーソン)1972
2001年宇宙の旅(キューブリック)1968
蜘蛛巣城(黒沢)1957
恐怖の報酬(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)1953
The War Game (ピーター・ワトキンズ)1965
不思議な選択です。いつも名画座の隅っこに座っていた感じが良く出ている10本。半分はフィルムセンター、半分が二番館かテレビで観たような選択がコックスらしい。イギリス映画が3本も入っているしね。『The War Game』は冷戦期の不条理映画のようだけど、資料が少なくよくわかりませんでした。
■ジョー・ダンテ
1946年生
・ファンサイト
市民ケーン (ウェルズ)1941
街の灯(チャールズ・チャップリン)1931
8 1/2 (フェリーニ)1963
天井V敷の人々(マルセル・カルネ)1945
The Dead (スタン・ブラッケージ)1960
羅生門 (黒沢)1950
サイコ(アルフレッド・ヒチコック)1960
レイジング・ブル(マーティン・スコセッシ)1980
捜索者(ジョン・フォード)1956
ウエスタン(セルジオ・レオーネ)1968
『ハウリング』、『グレムリン』の監督の好みは、映画館で観て至福瞬間を過ごせたノスタルジーを大切にしているようです。これくらいのアクの濃さがダンテ映画の魅力なんだろうな。実験映画作家スタン・ブラッケージの『The Dead』 は観たいなあ。
■スチュワート・ゴードン
1947年生
・ファンサイト
グリーンドア/第1部イブの復活 第2部グリーンドアの中で(ミッチェル・ブラザース) 1974〜 1975
フランケンシュタインの花嫁(ジェームズ・ホエール)1935
我輩はカモである(レオ・マッケリー)1933
ゴッド・ファーザー(フランシス・コッポラ)1972
キングコング(メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック)1933
サイコ(アルフレッド・ヒチコック)1960
ローズマリーの赤ちゃん(ロマン・ポランスキー)1968
サテリコン(フェリーニ)1969
2001年宇宙の旅(キューブリック)1968
ティングラー/背すじに潜む恐怖(ウイリアム・キャッスル)1959
ワイルド・バンチ(サム・ペキンパー)1969
<コメント(抄訳)>
『グリーンドア』はポルノ版『風と共に去りぬ』。
『フランケンシュタインの花嫁』は数少ない、第一作より出来の良い続編。
『キングコング』をすべての巨大モンスター映画の父であり、サイズの違う者の間で起こるラブストーリー。
『ローズマリーの赤ちゃん』は、ものすごく主観的な映画で、『ゾンバイオ』を撮る時のお手本になった。
『ティングラー/背すじに潜む恐怖』ウイリアム・キャッスルが手がけたパーセプト・ヴィジョン(客席に震動装置が仕掛けられている) での公開は恐怖をもたらせた。12歳のスチュワート・ゴードン少年は、ほかの観客と同様に映画館から家まで走って逃げ帰った。
なんといっても『ZOMBIO死霊のしたたり』、『スペース・トラッカー』!!の人。映画館で驚かされた分、監督になって観客を吃驚させようとしていうところがイイです。監督自身のコメントも気合いが炸裂していますなあ。
■ジム・ジャームッシュ
1953年生
アタラント号(ジャン・ヴィゴ)1934
東京物語(小津安二郎)1953
夜の人々(ニコラス・レイ)1949
賭博師ボブ(ジャン=ピエール・メルビル)1955
サンライズ(FWムルナウ)1927
キートンのカメラマン(エドワード・セジウィック)1928
少女ムシェット(ロベール・ブレッソン)1967
七人の侍(黒沢)1954
散り行く花(GWグリフィス)1919
無防備都市(ロベルト・ロッセリーニ)1945
<コメント>
「必ずしもこの順序では...」
ずっと変わりないよね。この人は。昔パリシネマテークから依頼された10本もおなじようだったし。そもそもすべて白黒映画というスカしかたもなんだねぇ。未だにアカデミズム御用達って感じですか?わるくはないけど、それだけかよっ!ってカンジ?
■テリー・ジョーンズ
1942年生
アニー・ホール(ウディ・アレン)1977
地獄の黙示録(コッポラ)1979
我輩はカモである(レオ・マッケリー)1933
ファニーとアレクサンデル (イングマル・ベルイマン)1982
恋はデジャ・ブ(ハロルド・ライミス)1993
野郎どもと女たち(ジョゼフ・L・マンキウィッツ)1955
Jour de fete (ジャック・タチ)1948
ナポレオン(ガンス)1934
七つの海の狼(シドニー・サルコウ)1953
キートンの蒸気船(チャールズ・F・ライスナー)1928
モンティ・パイソンの一員です。コメディが多いようですが、それ意外でも、うーん微妙にずれている感じがなんか不思議ですね。
■アキ・カウリスマキ
1957年生フィンランド
・ファンサイト
黄金時代(ブニュエル)1930
アタラント号(ヴィゴ)1934
バルタザールどこへ行く(ブレッソン)1964
散り行く花(グリフィス)1919
肉体の冠(ジャック・ベッケル)1951
グリード(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)1925
ぼくの伯父さん (タチ)1958
ナヌーク極北の怪異(ロバート・フラハティー)1922
無防備都市(ロッセリーニ)1945
東京物語(小津)1953
『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』、『ラヴィ・ド・ボエーム』、『浮き雲』でおなじみの笑えない笑いがツボの監督。
なんかこの人らしいといえばそれまでなんだけど、実に良いですな。みんなが熱く語っていると横でボソッと言っている雰囲気がたまらない。『肉体の冠』と『ナヌーク』を挙げる変なバランス感覚が秀逸です。
雨月物語(溝口健二)1953
サンライズ(ムルナウ)1927
ウエスタン(セルジオ・レオーネ)1968
アラビアのローレンス(デヴィッド・リーン)1962
ギャング(メルヴィル)1966
生きるべきか死ぬべきか(エルンスト・ルビッチ)1942
コンドル(ハワード・ホークス)1939
荒馬と女(ジョン・ヒューストン)1961
赤い靴(パウエル、プレスバーガー)1948
スリ(ブレッソン)1960
アキ・カウリスマキの兄。『ヘルシンキ・ナポリ/オールナイトロング』、『GO!GO!L.A.』などの人。こちらは常人がまだ理解できる並びだけどセンスが良いんじゃない。
■ブルース・ラ・ブルース
1964年生カナダ
・本人のサイト
情事 (ミケランジェロ・アントニオーニ)1960
底抜けてんやわんや (ジェリー・ルイス)1960
少年(大島渚)1969
ゾンビ(ジョージ・A・ロメロ)1978
8 1/2 (フェリーニ)1963
Fear Eats the Soul (ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)1974
奇跡の丘(ピエル・パオロ・パゾリーニ)1964
チャイニーズ・ブッキーを殺した男(ジョン・カサベテス)1976
仮面/ペルソナ (ベルイマン)1967
ウイークエンド(ジャン=リュック・ゴダール)1967
<コメント>
『情事』
アントニオーニだけが性の強迫観念についての映画をとても魅力的に作れる。 それは 「性と建築」と呼ばれたかもしれない。
『底抜けてんやわんや』
ほとんどが視覚ギャグとサイレント時代からのスラップスティックで構成された、ジェリールイスの監督デビューは、ポストモダンという言葉が存在する前から、ポストポダン作品を達成していた。
『少年』
家族を養うために当たり屋をする少年の寓話的な物語を、ヌーヴェル・ヴァーグの感覚で因習的な日本文化と映画を解体していく。
『ゾンビ』
高度資本主義の隠喩としてのゾンビ三部作の2作目は、恐怖、喧騒、預言的だ。
『81/2』
映画を作ったことのある者なら皆、これが映画作りについての最高の映画と考えるだろう。
『Fear Eats the Soul』
ダグラス・サークの『天が許し給うすべてのもの』の大胆なリメイク。ファスビンダーのメロドラマは人種、階級、年齢の偏見をわたしたちに突きつける。
『奇跡の丘』
ネオリアレズモの傑作。マルキスシトでホモセクシャルの無神論者がキリストについてこんな純粋な映画を作った。
『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』
たぶんアメリカのインディー映画作家にもっとも影響を与えた映画。ブッキーはハリウッドのジャンルを噛み砕き、感情の真実を吐き出した。
『ペルソナ』
ベルイマンのベスト。容赦、深遠、魅力的。
『ウィーク・エンド』
「私のエルメスのハンドバッグ!!!」
ゲイを主題にスーパー8で撮影して16ミリにブロー・アップしていく。何本かがゲイ&レスビアン映画祭で上映された。『スーパー8 1/2』はポルノ版8 1/2だそうだ。ちょっとポストモダン野郎かな。コメントだけど、スカした言葉遊びは訳せん。語学力不足のため意訳御免。
■リチャード・レスター
1932年生
カサブランカ(マイケル・カーティス)1942
市民ケーン (ウェルズ)1941
E.T. (スティーブン・スピルバーグ)1982
大人は判ってくれない(フランソワ・トリュフォー)1959
キートンの将軍(バスター・キートン)1926
ゴッド・ファーザー、ゴッド・ファーザーPart II(コッポラ)1972 1974
アラビアのローレンス(デヴィッド・リーン)1962
ナッシュビル(ロバート・アルトマン)1975
七人の侍(黒沢)1954
ぼくの伯父さんの休暇(タチ)1952
おなじみの早撮りまとめ撮りはお任せ、コメディセンス抜群のひと。まとも過ぎてたのしくなっちゃう10本の選択。『カサブランカ』を『市民ケーン』の上に置くところは洒落ています。コメディ映画もキートン、タチと並ぶと、ああ納得してしまう。
■リチャード・リンクレイター
1961年生
・ファンサイト
走り来る人々 (ビンセント・ミネリ)1958
スリ(ブレッソン)1960
2001年宇宙の旅(キューブリック)1968
グッド・フェローズ(マーティン・スコセッシ)1990
ママと娼婦(ジャン・ユスターシュ)1973
忘れられた人々(ブニュエル)1950
In a Year with Thirteen Moons(ファスビンダー)1978
市民ケーン (ウェルズ)1941
ファニーとアレクサンデル (ベルイマン)1982
インディーズ以来、ずっとテキサスで映画を撮っているという。タランティーノも買っているようです。『バッド・チューニング』、『恋人たちの距離(ディスタンス)』、『ニュートン・ボーイズ』とほとんど日本公開されているけど観ていないよね。
アメリカ人でファスビンダーと『ママと娼婦』を入れる人は、ジョン・ウォーターズくらいしかいない思ってビックリした。 要注目ですね。
■ジム・マクブライド
1941年生
赤い河(ホークス)1948
山猫(ルキノ・ヴィスコンティ)1963
市民ケーン (ウェルズ)1941
大いなる幻影(ジャン・ルノワール)1937
勝手にしやがれ(ゴダール)1959
たそがれの女心 (マックス・オフュルス )1953
黄色いリボン(フォード)1949
スリ(ブレッソン)1960
レディ・イヴ(プレストン・スタージェス)1941
老兵は死なず(パウエル、プレスバーガー)1943
<コメント>
あと5本あげるなら『サンライズ』、『ゴッド・ファーザーPart II』、『雨に唄えば』、『過去を逃れて』(ジャック・ターナー)、『走り来る人』
『勝手にしやがれ』のリメイク『ブレスレス』でカッコ良く日本に登場。でもキャリアは70年代からあるようです。この10本はバランスいいよね。
■エロール・モリス
1948年生
・本人のサイト
・山形ドキュメンタリー映画祭サイト
Detour (エドガー・G・ウルマー)1945
There's Always Tomorrow (ダグラス・サーク)1956
明日は来らず(マッケリー)1934
抵抗(ブレッソン)1954
ランジュ氏の犯罪(ルノワール)1935
野良犬(黒沢)1949
The Rise to Power of Louis XIV (ロッセリーニ)1966
Human Desire (ラング)1954
地獄の英雄(ワイルダー)1951
サイコ(ヒチコック)1960
観ていないけどカルト的な作品『The Thin Blue Line』をはじめ、ひねったドキュメンタリー映画を多く撮っている。『ブリーフ・ヒス トリー・オブ・タイム』(1992)は、サン ダンスでグランプリ。山形ドキュメンタリー映画祭で『死神博士の栄光と没落』が上映された。日本にはあまり入ってこない監督。この10本も渋すぎ。犯罪とか追いつめられた人などが好きなのかなあ。『The Rise to Power of Louis XIV 』はテレビ番組作品。
■カレル・ライス
1926年生チェコスロバキア出身
ブルジョアジーの秘かな愉しみ(ブニュエル)1972
大地(アレクサンドル・ドヴジェンコ)1930
Fires Were Started (Jennings)1943
レディ・イヴ(スタージェス)1940
ナッシュビル(アルトマン)1975
レイジング・ブル(スコセッシ)1980
ゲームの規則(ルノワール)1939
見知らぬ乗客(ヒチコック)1951
コレヒドール戦記(フォード)1945
東京物語(小津)1953
『土曜の夜と日曜の朝』『フランス軍中尉の女』で知っている人は多いがあまり観たことはない監督。『コレヒドール戦記』は傑作だけどあまり入れないよね。Fires Were Startedはドキュメンタリー。
■ジョージ・A・ロメロ
1940年生
・本人のサイト
カラゾーマフの兄弟(リチャード・ブルックス)1958
カサブランカ(カーティス)1942
博士の異常な愛情(キューブリック)1964
真昼の決闘(フレッド・ジンネマン)1952
キング・ソロモン (コンプトン・ベネット)1950
北北西に進路を取れ(ヒチコック)1959
静かなる男(フォード)1952
反撥(ポランスキー)1964
黒い罠(ウェルズ)1958
ホフマン物語(パウエル、プレスバーガー)1951
<コメント>
もし内容か職人芸に基づいて作品を選ぶべきなら、私はインテリじみた選択をするだろう。が、それはうそ臭く思えるだろうし、間違えなく一つか二つは自作を入れるよ。私の作品は天才の作品だと知性的に信じているからね。トップテンは自分の好みで選んだ方がいい。
私が地獄へ行く時に山ほどのDVDの袋を引きずって行く。冥土の渡し守カロンが「10枚だけだ、あとはケルベウスに食わせろ」と言う。どの10枚を選ぶ?永遠にだよ。
『カラマゾフの兄弟』
だれも私に合意することはないだろうね。陳腐でハリウッド的だ。しかしユル・ブリンナー、リー・J・コッブ 、リチャード・ベースハート 、アルバート・サルミ 、クレア・ブルーム、カーク船長(ウイリアム・シャトナー)!そしてマリア・シェル 。居酒屋でのダンスは着衣のダンスでは映画史上もっともセクシーなものだ。音楽は泣かせるしデヴィッド・オパトッシュも泣かせる。
『カサブランカ』
素晴らしい飛行機、素晴らしい帽子、素晴らしい酒場。すべてが入っているオールタイムの一本。
『博士の異常な愛情』
キューブリックは全部持って行きたい。アタマでは、彼が作ったのは名作だと分かっているが、『博士の異常な愛情』はわたしを参らせた。『ロリータ』はそれに次ぐが、『duck and cover』の日々のなかで育つと、ひねくれたて水爆を愛するようになる。もしも核爆発のオーブンの中にいたら、スー・リオンはもはや大して興奮するものじゃないし、シェリー・ウインターズはわたしの痛みをひどくするだけで、私はドクター・ストレンジラブから、ピーター・セラーズを治すことができると考えるだろう。
(訳注)『duck and cover』核攻撃からの防御の仕方を教える教育アニメーション映画。 現在パブリックドメインなのでネットで視聴できる。
『真昼の決闘』
西部劇を観ずして、永遠の地獄をどうやって過ごせるか?テレビ番組「われらのキャシディ」を観て育ったので、西部劇は大好きだ。お気に入りもかなりある��p戟ネたは「どうやったら主演ジョン・ウェイン以外の西部劇をさがせるだろうか」と尋ねるだろう。そう、わたしはデュークをリストに入れた(下を参照)。しかし『真昼の決闘』にはグレイス・ケリー女王と鶏小屋がある。わたしは鶏小屋なしでは永却処罰に行けない。
(訳注)『真昼の決闘』を観ていないので意味不明なところがあるが、たしかグレース・ケリーが鶏小屋から敵を射殺するシーンがあったように思うが……、調べます。
『キング・ソロモン』
ここにはヴィレッジ・ボイスのエンターテインメントデスクの完璧なスタッフをくすくす笑うもうひとりの私がいる。さあ、すでに地獄にいる。楽しむんだ、いいな?私はブロンクスのLeowsAmericaで育った。親たちが連れて行ってくれたハリウッド・スペクタル巨編を観に行ったことは、暴力学校や(嗚呼)教会のちいさな墓地のような「禁じられた場所」は別にして、もっとも刺激的な大人びた行為だった、なぜならかれらはそれを「安全」だと思っていたからだ。
『北北西に進路を取れ』
地獄で永却処罰になったら、すこしは楽しいと思いたいだろう。たぶんトウモロコシ畑の中のケーリー・グラントが、いまの地獄の方がマシと思わせてくれるはずだ。
『静かなる男』
わたしはカトリック信者として育てられたので、余計この映画はわたしを引きつけるものを持っていたのかもしれない。しかし観るたびに、この堕落したいまでさえ、この作品と恋に落ちてしまう。
『反撥』
何を持ってホラー映画とするか。多くの人はこの部門に『反撥』を含まないが, 私は含む。『ジョーズ』はどうか?『羊たちの沈黙』は?答えはイエスだ。これらの作品はジャンルを発展させてきた。でも待ってくれよ、わたしたちはローマについて話しているんじゃない!恐怖を味わいたいなら『反撥』を観たまえ。
『黒い罠』
地獄に行って、だれが『市民ケーン』を必要とするか?わたしは『黒い罠』を観る。復元版じゃないよ、ヘンリー・マンシーニをつれて来てくれ!
『ホフマン物語』
これはトップテンの投票からはずれるが、私はこの映画を最後に選ぶことにした。なぜならこれはオールタイムで好きな映画なのだ。そして私が映画を作りたくなったきっかけの映画だから。
さすが、ゾンビ番長、ロメロだね。じぶんに誠実な感じがいいなあ。コメントを読むと子ども時代のカトリックの影響が大きいんだね。
■アラン・ルドルフ
1948年生。
甘い生活(フェリーニ)1959
サンライズ(ムルナウ)1927
ゲームの規則(ルノワール)1939
ギャンブラー(アルトマン)1971
生きる(黒沢)1952
仮面/ペルソナ (ベルイマン)1967
博士の異常な愛情(キューブリック)1964
市民ケーン (ウェルズ)1941
アメリカの夜(トリュフォー)1973
底抜け極楽大騒動 (ジョン・G・ブリストーン)1938
アルトマン門下はやはり人間ドラマだね。渋い作品が多いですが、しかし『底抜け極楽大騒動』とはなぜ……。
■バーベット・シュローダー
1941年生 イラン出身
・紹介サイト
或る殺人 (オットー・プレミンジャー)1959
黒の報酬(レイ)1956
復讐は俺にまかせろ(ラング)1953
ヨーロッパ一九五一年 (ロッセリーニ)1952
祇園囃子(溝口)1953
早春(小津)1956
奇跡(ドライヤー)1955
リオ・ブラボー(ホークス)1959
サンライズ(ムルナウ)1927
めまい(ヒチコック)1958
イラン出身で、ヌーヴェルヴァーグの作家の作品(エリック・ロメール、ジャック・リベット)を製作、『モア』で監督デビュー。その後ハリウッドメジャーのサスペンス『バーフライ』、『絶体×絶命』などを量産。わからん人だ。正統派じゃなく、ひねたニューロティック(?)な映画が好みのようです。
■クエンティン・タランティーノ
1963年生
・ファンサイト
続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(レオーネ)1966
リオ・ブラボー(ホークス)1959
タクシー・ドライバー(スコセッシ)1976
ヒズガール・フライデー(ホークス)1940
ローリング・サンダー(ジョン・フリン)1977
ニューヨークの恋人たち(ピーター・ボグダノヴィッチ)1981
大脱走(スタージェス)1963
キャリー(ブライアン・デ・パルマ)1976
コフィー(ジャック・ヒル)1973
バッド・チューニング(リチャード・リンクレイター)1993
キング・ボクサー大逆転(チェン・チャン・ホー)1972
Hi Diddle Diddle (Stone)1943
この人は毎回どのベストテンをみても全部入れ替わっているところがいいよね。ただ『リオブラボー』はいつも入っているな。なかなか『ローリング・サンダー』は入らない。『バッド・チューニング』はここにも投票しているリチャード・リンクレイター監督作。『キング・ボクサー大逆転』は香港映画、ただ似たようなタイトルが多いので本当にこれでいいかは不明。『Hi Diddle Diddle』は日本未公開コメディ。
■ポール・ヴァーホーヴェン
1938年生オランダ出身
甘い生活(フェリーニ)1959
イワン雷帝 第二部(エイゼンシュテイン)1944
アラビアのローレンス(デヴィッド・リーン)1962
羅生門 (黒沢)1950
めまい(ヒチコック)1958
第七の封印(ベルイマン)1957
黄金の馬車(ルノワール)1953
メトロポリス(ラング)1926
昼顔(ブニュエル)1967
お熱いのがお好き(ワイルダー)1959
<コメント>『氷の微笑』は何に影響されたかと言われれば、私はヒッチコックにもっとも影響され、とくに『めまい』と『裏窓』で監督業のの勉強をした。
思わず笑っちゃうほどすごく普通じゃん。でもこのベストテンの普通さを見れば、この人のイメージの源泉は過去の映画に影響されて撮る人じゃないことがわかるような気がする。
■ジョン・ウォーターズ
1946年生
・本人のサイト
天が許し給うすべてのもの(サーク)1955
ベビイ・ドール(カザン)1956
夕なぎ(ロージー)1968
女はそれを待っている(ベルイマン)1958
チェルシーガール(ウォホール)1965
8 1/2 (フェリーニ)1963
ファスター、プシィキャット!キル!キル!(ラス・メイヤー)1966
ママと娼婦(ユスターシュ)1974
ティングラー/背すじに潜む恐怖(キャッスル)1959
オズの魔法使い(フレミング)1938
さすが、われらがウォーターズ。相変わらずセンスの良さとバッド・テイストが同居してます。ロージーが自作と認めていない『夕なぎ』を入れているイヤさ加減が素晴らしいです。